──そこまで細かな指導をなさるんですね!

アメリカやヨーロッパなどの海外では、政治家や経営者などは必ずといっていいほど、イメージコンサルタントがついています。

演説のとき、大統領は何色のネクタイをつけると支持率が上がるか、大衆に手を振るときはどの角度がいいかなど、科学的な根拠をもとにコンサルタントがアドバイスすることはよく知られていますよね。日本では外資系企業のトップが中心でしたが、日本企業にもずいぶん浸透してきました。

最近では、若手のビジネスパーソンの方のパーソナルイメージコンサルタントも増えています。その人の特徴、個性などを見て、プレゼンではどう話し、どう手を動かすかなどをアドバイスします。

たとえば、本文の「49. プレゼンの成功はへそより上で決まる」でも述べましたが、プレゼンのとき、手の位置は常にへそより上をキープします。だらりと手を下げては、聞いている人の目線が下がるからです。そして、顔のすぐそばで手に動きをつけて説明すると、注目をぐっと集めることができます。資料なども顔のすぐそばで掲げると、相手の印象に強く残ります。

こうしたアドバイスの後、プレゼンや会議で周囲の評価がガラリと変わり、成約をどんどん得られるようになったりして、驚かれる方もいらっしゃいます。

自分の印象はコントロールできる

印象って、それくらいものごとを左右するものなんですよ。わたしたちは「自己演出」と呼んでいます。

自分のイメージを変えてビジネスで生かしたいなら、「自己演出」をとりいれてみてください。あなたのイメージは本当に文字どおり、ガラリと変わります。
 

Carpe Diem(カーペディエム)代表  西松眞子さん
Carpe Diem(カーペディエム)代表  西松眞子さん

──ビジネスに「自己演出」は必要でしょうか?

わたしは企業に出向いて「自己演出」の研修やセミナーをすることも多いのですが、そうした機会にも、タレントでも俳優でもない一般のビジネスパーソンに「演出」など必要か? と疑問に思う方が少なからずいます。

「ビジネスの場では仕事をすればいいのであって、印象をアップしたりするのは余計なことではないか」と、考えてらっしゃるんですね。

仕事をきちんとすることは、もちろん必要です。印象ばかりアップしたところで中身が伴わなければ本末転倒ですからね。

ただ、ビジネスの重要な、そして大きな部分は「対人コミュニケーション」です。いかにすばらしく、非の打ち所のないビジネスプランでも、提案のしかたがまずければうまくいきません。

提案を受ける側も、論理的に、合理的に判断するのが原則ですが、最後の決め手になるのは「心を動かされたか」であったり、相手を「信頼できるか」だったりします。
「この人となら一緒にビジネスをやってみたい」「この人からなら保険を買ってみよう」と。
ですから、ビジネスには人の心を動かし、気持ちを通わせることが不可欠です。

人間は機械ではありません。

好印象を与えるしぐさ振る舞い、信頼を得る言葉などを身につけることは、決算書を読めるようになることと同じくらいに必要なことなのです。

キャリアを重ねた方、人の上に立つ方ほど、このことの重要性に気づいていらっしゃいます。

女性に缶コーヒーを渡すときのコツは?

──西松さんが実際にコンサルタントなさっているエグゼクティブの方々の印象を聞かせてください。

若いころ、経営者や重役など、いわゆるエグゼクティブの方々って、厳しくてコワイ方が多いのでは、と思っていました。でも、実際にお仕事させていただくと、印象は真逆でした。

そして、のべ3000人以上のエグゼクティブと出会ってきて、わかったことは、
「立場が上になればなるほど、気くばりをする」
ということです。

みなさん、とても相手の気持ちにセンシティブです。だからこそ、何百、何千という人を動かす立場にいらっしゃるのだなあ、と納得します。

本書でご紹介している数々の「気くばりのコツ」もエグゼクティブの方たちから教えてもらったものです。


──すぐに実践できることを何かご紹介してくださいますか?

そうですね、とても日常的なことを一つ挙げてみましょう。