「『文句があるなら(トップである)この私に言え』と伝えろ! 君たちは誰よりも頑張っている。それにわれわれIT部署が反乱を起こしたらどうなると思う? 電話1本できなくなるんだぞ。会社だけじゃなくて世界が崩壊するぞ。君たちはそれだけの力を持っている、その誇りを持って仕事をするんだ」(157ページ)

どんなに厳しく口の悪い上司でも、部下たちを守り鼓舞しながら感謝の気持ちを伝えるこんな言葉を聞いたら、意気に感じない部下はいないでしょう。

信頼し、任せて、結果を確認し、責任を取る

上司は、部下たちの仕事のすべてに責任を負うことは言うまでもありません。しかし、部下がミスをしてしまった時、「申しわけございません、私のあずかり知らぬうちに……。○○がミスを犯しまして」と言い訳する上司は少なくありません。

また、部下のミスや、自分の評価が下がることを恐れるがあまり「マイクロマネージメント」に走ってしまう上司もいます。部下は過剰なプレッシャーと鬱陶しさを感じ、本来の力を発揮しにくくなるでしょう。一方で、部下の仕事を理解せずに任せてしまっている「丸投げ上司」も存在します。

著者が初めて秘書を務めたのは日本人のボスでした。米系金融で極めて高い評価を得ていた人物で、そのボスは、初日のミーティングでこう指示を出しました。

「僕の君へのリクエストは『結果』を出すことで、途中経過はいちいち報告する必要はない。やり方は君に任せる。君が気をつけるのは結果のレベルと時間だ。ただし、自分でどうしてもわからないことは躊躇せずに聞くように。調べる努力は必要だが、それ以上は時間の無駄だからね」(57ページ)

このボスは、仕事の手順に関しては「任せる」と言い切り部下に対する信頼を伝え、ただし困った時には1人で抱え込むな、とはっきり指示しています。そのうえで結果は厳しくチェックするぞ、と宣言しているのです。

部下を信頼して任せつつも重要なポイントには目を光らせ、結果については責任をとる。これが、できるボスの仕事の任せ方なのです。

知らないことは部下にも教えを請う勇気を持つ

最後に登場するのは部下から「ビッグボス」と呼ばれる米系証券会社のエグゼクティブ。文字通り大きく、しかも寡黙なため気軽に話しかけられる上司ではありません。