それから、念のために書き記す書面として「覚書(おぼえがき)」というものもありますが、こちらは当事者間での合意事項を書くもので、相手と自分双方の署名(または記名)と押印が必要です。念書は一方の当事者(たとえばお金を借りた側)が単独で他方の当事者(この場合ならお金を貸した側)に渡すものですので、その点が違いとなります。

さて、念書を書くときのポイントをみてみましょう

  • 文書の標題を明記する
  • 形式的記載事項を落とさず書く
  • 要件を簡単明瞭に書く

2番目にある「形式的記載事項」とは、下記のようなものです。

  • 標題(上の1番目と同じ。この場合は「念書」と明記して覚書や契約書などと区別する)
  • 当事者の住所(あるいは本店の所在地など)
  • 氏名(もしくは、商号・代表者名など)
  • 作成年月日
  • 当事者の署名

では、サンプルで見てみましょう。

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借金返済の不履行を侘び、債務の履行を約す念書(『新版 他人に聞けない文書の書き方』P.205より)

それぞれの項目を詳しく解説すると、以下のようになります。カッコの中はこのサンプルに当てはめた内容となっていますので、照らし合わせてみてください。

まず、(1)は標題として「念書」と明記。次の3行は前提として

(2):いつ(=○年○月○日)、なにをしたのか(=お金を借りた)
(3):どういう約束だったのか(=○年○月○日までに50万返す約束だった)
(4):それがどうなったのか(=返せなかった+謝罪の言葉)

と書いています。続いての3行では、

(5)・(6):どうするのか(=借りた50万+未払利息金を○年○月○日までに返す)
(7):念書の末尾に書く慣用的文言

となります。そして、(8)で念書の作成日、(9)で念書の作成者であるお金を借りた人の氏名・住所・押印、(10)で宛名を書いています。

最後に、収入印紙について

「借用証」「念書」の書き方の基礎知識としては以上となりますが、最後に収入印紙について簡単に記載しておきます。印紙税法により、金銭借用証(正確には「消費貸借に関する契約書」)などには、記載金額に応じた収入印紙を貼り、消印することが義務付けられています(5万円以上の場合/2015年5月現在)。

もし、自分が借用証などを書く側になり、収入印紙の用意がない場合には、その金額を貸主に払い、貸主に貼付・消印を依頼してもかまいません。

また、印紙貼付が必要な場合に貼付されていなくても文書の効力には影響ありませんが、印紙税法の違反として取り扱われることになります。