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その他、時間が決まっている生放送のフリートークの組立てや時間配分は計算が不可欠ですし、本番中に流れを変えたいときに様々な角度から物事を見ることは、数学的な思考法が役立っていると感じます。

数学は決して計算や公式だけの学問ではありません(もちろん計算や公式も大切です。社会に役立っている公式もたくさんあります)。その考えていく思考法自体も職業の中で活かされているのです。余談ですが、私の好きなクラシックバレエやピラティスの中でも数学の思考は大変役に立っています。さらに付け加えれば、仕事だけでなく人間関係にも。

本書では実際の仕事の現場で、数学の理論がどのように使われているのかを紹介しました。なるべく理系の職業に偏らず、身近で、かつ意外性のある幅広い職業を取り上げるようにしました。理系、文系に関わらず、様々な職業の中で数学の理論が使われていることを少しでも感じて頂ければ幸いです。

数学を勉強する意味がわかる

本書を手に取ってくださった方の中には、数学があまり得意でないという方もいるかもしれません。私自身も数学科を出ていますが、飛びぬけて数学が出来たわけでも、特別に数学のセンスがあったわけでもありません。それが中学3年生の時に大好きな数学の先生が出来たことで一変。その先生に近づきたい一心で私は数学を勉強しました。悪い点数を取ったら恥ずかしいですから、それはもう必死です。そして気が付けば数学科に進学するまでになっていました。

その時に感じたのは、センスが無くても中学・高校の数学は努力次第で克服できるということでした。理由は何でも良いと思います。数学はこちらから愛情をもって向き合えば必ず答えてくれます。

本書を通じて、数学が世の中の様々な場面で健気に働き、目立たなくても支えとなっていること、そして、数学を勉強する具体的な意味付けとして、少しでもお役に立てれば幸いです。


篠崎 菜穂子(しのざき なおこ)
日本数学検定準1級、中学高校数学教員免許を持つ。理工学部数学科を卒業後、中学、高校の数学講師を経てフリーアナウンサーに。数学や科学に関するイベントの司会やCS放送の中学数学講座の講師、Web大学での確率統計講座のアシスタントなど専門を活かした仕事も多数。人との出会いが多い仕事の中で、数学が様々な場面で活かされていることを日々感じるように。小学生の娘と算数の勉強をする中で幼少期の算数との関わりの大切さを感じ、幼児さんすうインストラクターの資格を取得。数学の楽しさを伝えるべく活動中。