営業マンが現場でお客さんと、接する際の武器は「会話」です。
書店には「話し方」に関する本がたくさんあり、「人を引き付ける話し方」「説得力のある話し方」など様々なテーマの本が営業マン向けに書かれています。
しかし話し方を工夫しても、なぜかお客さんとの会話がしっくりいかない時はありませんか?それは、ある大事なプロセスが抜けているからなのです……。

 ■「合意のとり方」>「話し方」

 実は話し方よりも、もっと優先されるべきことは〔合意〕というプロセスです。「合意ってどういうこと?そんなの会話をしているんだから、合意のうえでしょう」と不思議に思われるかもしれません。しかし、実際には〔合意〕をとりつけないまま、話を進めてしまっているため、会話がうまく進まないことがあります。
といっても、なかなかイメージしにくい〔合意〕のプロセス。『最高の営業デビュー』(佐藤昌弘著)から自動車ディーラーの営業を例に見てみましょう。

お客さん:「CMで観た、○○という車はこちらですか?」
営  業:「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。私は営業鈴木と申します。こちらは最新フルモデルチェンジをした○○です。燃費もこれまでよりもさらに良くなり、内装も良くなりました。カラーバリエーションもたくさんあります。また、オプションでカーナビも最新のものにすることができます。よろしかったら試乗もできますよ」(135ページ)

どうでしょうか?お客さんに問われた車について詳しく説明し、試乗の提案もおこない、丁寧に接客しています。
しかし、これは〔合意〕のとれていない例です。どこに問題があるのでしょうか?〔合意〕のプロセスが入った会話を見てみましょう。

お客さん:「CMで観た、○○という車はこちらですか?」
営  業:「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。本日担当させていただく、私は営業の鈴木と申します。よろしくお願いします。
まずは、ざっとご覧いただきましょうか?それとも前のモデルとの違いなどをご説明いたしましょうか?
もしよろしければ、そのあとでも良いので、今乗っていらっしゃるお車のこととか、少し簡単にお話しをうかがわせていただきたいのですが。そのような順番でお話を進めさせていただいて、よろしいでしょうか?」(136・137ページ)

いかがでしょう?会話を進めるにあたり、どの方向に話を進めていくのか、お客さんに一つずつ確認していますね。
〔合意〕を重視することによって、お客さんが関心を持ち、情報収集しようとしている段階なのか、それとも比較と判断をしている段階なのかを見極めることができます。また、お客さんの反応によって警戒度も知ることができます。