一方、ラテラル・シンキングで考えるとどのような解決法が考えられるでしょうか。その一例として、「下がってくる前の車に向かって走り、接触するギリギリのところで静止する」というものがあります。

ラテラル・シンキングによる解決法の一例
ラテラル・シンキングによる解決法の一例 (『3分でわかるラテラル・シンキングの基本』 p.18より)

これならば、多少の傷はつくかもしれませんが、大クラッシュやあなたの後続車を巻き込んだ玉突き事故という最悪の事態は免れます。少なくとも、加速しながら下がってきた車とぶつかるよりは、被害が少なくて済むでしょう。

「衝突を避けるためにバックしなければならない」という前提を疑い、「バックする前に前の車を受けとめる」という新しい見方をしたことによって、目からウロコの問題解決の方法を生み出すのがラテラル・シンキングの真骨頂といえるでしょう。

オズボーンのチェックリスト

ラテラル・シンキングの基本は、この<前提を疑う・新しい見方をする>に<組み合わせる>を加えた3つだけです。それらに沿って考えるだけで、誰でも創造的なアイデアや目からウロコの問題解決策を効率的に生み出せるのです。

また、ラテラル・シンキングを使ってアイデアを生み出すためのチェックリストとして、ブレーンストーミングの発案者で、創造性分野のパイオニアであるアレックス・オズボーン教授が提唱した「オズボーンのチェックリスト法」というものが知られています。

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1. 他に使い道はないか?(Put to other uses)
 そのままで新しい用途はないか?
 改造して他の使い道はないか?
 違う層へ提案できないか? 
 他の地域へ持っていったらどうか?

2. 他からアイデアを借りられないか?(Adapt)
 何か似たものはないか?
 何かの真似はできないか?
 歴史からアイデアを借りられないか?
 まったく違うカテゴリーからヒントを得られないか?

3. 一部を変更したらどうか?(Modify)
 商品の意味を変更したらどうか?
 色、動き、音、匂い、様式、型、場所を変化させたらどうか?

4. 大きくできないか?(Magnify)
 時間、頻度、強度、高さ、長さ、価値、材料を増大できないか?

5. 小さくできないか?(Minify)
 減らす、小さくする、濃縮する、低くする、短くする、軽くする、省略する、分割することはできないか?

6. 一部を代用できないか?(Substitute)
 人を、ものを、材料を、素材を、製法を、動力を、場所を代用できないか?

7. 並び方を変えられないか?(Rearrange)
 要素を、型を、レイアウトを、順序を、因果を、ペースを変えられないか?
 並びを作れないか?

8. 逆にすることはできないか?(Reverse)
 反転、前後転、上下転、左右転、役割転換させたらどうか?

9. 組み合わせができないか?(Combine)
 ユニットを、目的を、主張を、アイデアを組み合わせたらどうか?
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たとえば、「1. 他に使い道はないか?」の例でいえば、ソフトバンク創業者・孫正義社長は、1979年当時、日本でブームが去り過剰になっていたインベーダーゲームを米国に持っていき、ひと財産を築いたそうです。

また、「7. 並び方を変えられないか?」の発想で成功したのが、コンビニ業界トップに君臨するセブンイレブン。小売業界の常識である、日付の古い商品から売る「先入れ先出し方式」をひっくり返し、新しい日付の商品から売る「後入れ先出し方式」を打ち出しました。常に新しい商品が並んでいる印象を与え、商品の回転率をアップさせたのです。

このように、一人勝ちをする個人や企業というものは、ラテラル的な発想で多くの人が想像も付かないようなところに勝機を見出し、まんまとものにしています。

本記事でラテラル・シンキングの基本を身につけたあなたのビジネス脳は、日常で、ビジネスで、そしてあらゆる場面で、今まで見えなかったものを感じとり、思いもよらなかったものを生み出すことでしょう。