「恋を何年、休んでますか」

こんなコピーを目にすると、一瞬ドキッとしてしまいます。1989年に使われた伊勢丹のキャッチフレーズですが、のちにテレビドラマのタイトルにも採用されるなど、大変評判になりました。当時を代表するコピーライターである眞木準さんの手によるものです。さすがです。こんなコピー、なかなか書けるものではありません。

しかし、感心してばかりもいられません。わたしたち普通のビジネスパーソンにも、文章を書く機会が頻繁に訪れます。企画書・提案書や店頭POP、マーケティングのためのブログの文章などですが、精魂込めて作りあげたそれらの多くはいとも簡単に「スルー」されてしまう運命にあります。そんな悲劇が起こるのはおそらく、そこにあるタイトルや見出し、フレーズが読み手の「心」に残らないからでしょう。

ビジネススキルとしての「キャッチコピー力」

先に述べたように、コピーライティングは、クリエイターだけの仕事ではありません。私たちが書かなければならないビジネス文書にも、伝えたいことを印象的に表現するタイトルや見出しをつけて上司や顧客の気持ちを「グッ」とつかまなければ、仕事が前に進みません。

ましてやこのネット社会においては、ブログにメルマガ、SNSなどで自分を表現する機会も増えています。ネットの海に漂う膨大なテキスト群の中から自分の文章に目をとめてもらい、最後まで読んでもらうには、どうすればいいのでしょうか。

当然ながら簡単ではありません。しかし私たちは、すぐれたコピーから学ぶことはできます。そのようなコピーたちには、人の心をわしづかみにして離さない「何か」があるに違いないのです。著名なクリエイターに挑戦する必要はありませんが、その「何か」を盗み取って、上司や顧客の心をわしづかみにしようではありませんか。

魅力的なキャッチコピーはどんな要素を持っているのか。『キャッチコピー力の基本』(川上徹也著)を参考に、長く愛されている名フレーズからその秘密を探りましょう。

「スルー」されない名フレーズ 3つの特徴

1.自分に関係があると思ってもらう

『気が付くと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ』


「あ、おれの机、いつもぐちゃぐちゃ…」と反応してしまう人は多いでしょう。これはベストセラーになった翻訳書籍のタイトルです。コピーではありませんが、重要な基本をそなえているキャッチフレーズの好例です。冒頭の「恋を何年、休んでますか」も「わたしの最後の恋はいつだっけ…」などと、つい「自分のこと」に結び付けてしまう力を持っています。

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