「お前は何様だ」などという、上司の不用意なひとことのせいで、仕事に対するやる気が一気に失せてしまったことはありませんか?そして、その上司の人としての“格”を疑ってしまったことは?

もしあったとしたら、そうした経験は忘れずに心にとどめていたほうがよさそうです。あなたがリーダーとして部下を動かす立場になったとき、その上司と同じ轍を踏まないためにも、リーダーの“格”は言葉に現れることを覚えておいて損はありません。

『一流の人が言わない50のこと』は、自己啓発書で多くのファンを持つ中谷彰宏さんが選んだ、「それを言ってしまった人の“格”が下がってしまう言葉集」といえる一冊です。「一流の人が言わない」、つまり「一流ではない人がつい言ってしまう」それらの言葉が、なぜその人の品格を下げてしまうのかを、辛辣に、またユーモアたっぷりに解説してくれます。

この記事では、その「50の言葉」の中から、若手リーダーや、これからリーダーになる人たちに向けて、それを言ってしまったら誰もついてこなくなるかも知れない、とてもコワイ言葉を紹介しましょう。

「全部大事だ」

仕事の優先順位を示してくれない上司は、部下にとっては困った存在です。人手不足で時間も足りないのに「あれもやれ、これもやれ」では、何を頑張ればいいのかわからないからです。

著者は、優先順位をつけたうえで、「これはやらなくていい」「これは気にしなくていい」と言ってくれるのが一流の上司と言います。仕事を投げるだけ投げて「目標達成のために何を重視し、部下の行動を導いていくのか」という管理をしなければ、マネジャーとしての役割を果たしているとはいえないからです。

やらなくていいことの判断は、現場の人間ではできないのです

(50ページより) 

「どうなってるんだ」

「あれもやれ、これもやれ」の次に「一体どうなってるんだ。遅い!」と急かされたら、部下のモチベーションは間違いなく低下します。「真面目な人ほど丁寧でクオリティーの高い仕事をしようとするから、上司から見るとイライラすることがある」と理解すべきです。部下も頑張っているのです。

提出が遅れている部下に対しては「大変だね」と声を掛けましょう。部下は「上司が自分を理解してくれている。よし、間に合わそう」と考えるようになるはずです。

部下が上司について行くのは、自分が頑張っていることをわかってくれているからです

(101ページより)

 「こんなことまでいちいち報告するな」

「そんな小さなことは、私の手を煩わすまでもなく君たちで解決できるだろう。やってよ」ということなのでしょう。しかし、こう言われた部下は、「せっかく報告したのに…」と不満を募らせ、以後は重要なことであっても報告をおろそかにしがちになってきます。

結果として大事な情報が入らなくなり、上司も部下もお互い何をやっているのか、本当のところがわからなくなります。こうなるとチームが機能しなくなるまでにそう時間はかかりません。

小さいことや、すでに自分が知っていることまで報告してくれるのは、ありがたいことです

(86ページより)

「誰の責任だ」

あらゆる仕事にトラブルは発生します。そんなとき戦犯探しをするのは二流の上司だ、と著者。みんな自分がかわいい。保身のためにみんながミスを隠蔽して、結局原因がわからない。そうしているうちにトラブルが再発するのです。

一方、一流の上司は犯人捜しをしない。すぐに再発防止策をつくるのです。必ずしも、ミスをした人自身に原因があるわけではないことを知っているからです。犯人捜しに明け暮れていては、いつまでたっても「改善」ができません。

事故やトラブルが発生する原因は当事者近辺にはありません。もっと遠いところにあります

(112ページより)

「不安だ、心配だ」

先の見通しを立てにくいビジネス環境のなか、リーダーだって不安です。とはいえリーダーが何の工夫もなく「不安だ不安だ」「心配だ心配だ」というばかりでは、部下がついてくるはずもありません。

人がついてくるリーダーは違います。「万が一のことがあったら、こうしよう」と対策を決めておくのです。動じない気持ちが外見にもあらわれ、頼りがいのあるリーダーと評価されるでしょう。

不安と心配は、工夫でしか乗り越えることができないのです

(182ページより)


本書を一読すると、「言葉」の大事さにあらためて気づかされます。何気なく発してしまう言葉が周囲に与える影響を、わたしたちは過小評価しているのかも知れません。特に、人を味方にして、動かさなければならないリーダーは、「その一言に、品格が現れる」ことを意識しておくべきでしょう。