一流ホテルのサービスの源とは?
サービス業においては、顧客の望むサービスはさまざまに異なります。そうした望みを明確に伝えてもらい、それに応じたサービスを提供すればいいだけなら非常に楽な話です。しかし、一流のサービスを提供している人(あるいは企業)は、その上を行っています。

たとえば、顧客自信も意識していなかった潜在的な望みを見抜いて、サプライズとして提供したり、その場限りでは損をするような提案になっても、顧客の望みに忠実に従うことで信頼を勝ちとり、リピーター、上客としての関係を築いています。

こうした一流のサービス提供者の共通点のひとつに「感性が磨かれている」点があげられます。単に「処理能力が優れている」「セールストークがうまい」といった表面的なスキルが高いのではなく、「相手が本当に望んでいるのはどういうことなのか」を見抜く力が優れているからこそ、質の高いサービスができるのだと考えられます。

また、これはサービス業に限りません。仕事、プライベート、あらゆる人間関係において誰からも好感をもたれる人は、こうした力が優れています。

では、このような感性を磨くにはどうすればいいのでしょうか。そのヒントが詰まった一冊が、今回ご紹介する『リッツ・カールトン 一瞬で心が通う「言葉がけ」の習慣』です。





ホテル業は単純にいい景観の部屋を用意し、美味しい料理を提供すれば成り立つわけではありません。「いかにして宿泊客が快適と感じるサービスを提供するか」がカギとなります。国内外で一流と呼ばれるホテルは、とくにこの一点に腐心しています。

本書に登場するリッツ・カールトンでは、「感性の力」を高めることによって宿泊客の望みをひきだし、それに応じたサービスを提供することで、数々のアワードを受賞しています。

本書には、リッツ・カールトンが実際に行なったサービスを紹介しながら、世界に通じるサービスを提供する感性を磨くヒントが書かれています。それらはまた、他人から信頼され、望ましい人間関係を構築するためのヒントでもあります。

今回の特集は、その中から1点pickupしてご紹介します。
高野登

たかの・のぼる
1953年、長野県戸隠生まれ。ホテルスクール卒業後、ニューヨークに渡りホテル業界に就職。NYプラザホテル、LAボナベンチャー、SFフェアモントなどでマネジメントを経験。90年、サンフランシスコのリッツ・カールトンの開業に携わる。93年にホノルルオフィスを開設。翌94年に日本支社長として帰国。ブランディング活動を展開しながら、97年に大阪、2007年に東京の開業をサポート。2009年、長野市長選出馬のため退社。3週間の準備期間で現職に651票差に迫るも惜敗。2010年、人とホスピタリティ研究所設立、現在に至る。
 
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◆制約を外してお客様の本当の望みを最優先する


(本書 p.118より)

●予約時の電話に15分以上かけるホテル


お客様にホテルを利用していただくという体験は、電話で予約をお受けする時点から始まっています。通常、予約の通話時間は、短いホテルで3分半、長いホテルでも7分程度とされています。予約センターにはコンピューターが設置されていて、どのお客様と何分通話したのかがすべて記録されています。

ここで「20分」などという記録が見つかると、「なぜそんなに時間がかかったのか」と監督者から注意を受けることになります。予約の電話は、短ければ短いほど効率的だからです。

先ほどもご紹介しましたが、リッツ・カールトンでは、予約の電話に15分から20分程度かけることもあります。特に初めてリッツ・カールトンを利用されるお客様の場合、ホテルに対して何を求めているのかを可能な限り先読みしておこうとします。そこに時間をかけてこそ、お客様の本当の要望に沿ったおもてなしができると考えているからです。

●その日お客様の要望を叶えられるのは、うちのホテルではない!


こんな話もあります。あるお客様は、予約に至った経緯をこのようにお話ししました。

「地方に住んでいる母親は、若い頃に東京の浜松町界隈で仕事をしていました。もう年齢的に一人で上京することは難しく、おそらく今回が最後の東京見物になりそうです。だから娘である自分が、母の誕生日に東京での滞在をプレゼントしたいと考えているんです」

母親想いの娘さんの気持ちが伝わってきます。

もちろん、そのまま予約を受けても何も問題ありません。しかし、お話を聞いていると、お客様がリッツ・カールトンを考えた理由が「東京タワー」にあることがわかりました。ある雑誌に、東京タワーが見えるホテルとして紹介されているのをご覧になったそうなのです。

「若い頃に浜松町で働いていた母親に、懐かしい東京タワーが見えるホテルに泊めてあげたい」。どうやら、それがお客様の本当の希望のようです。

しかしお客様の希望にぴったり合う部屋は、ご希望の日にはすでに満杯です。でも、ライバルではありますが、芝公園には、上層階に泊まれば東京タワーを間近に望み、浜松町近辺も一望できるホテルがあります。

予約係は決断しました。

「申し訳ありません。お客様にお薦めしたいお部屋は、あいにくすべて埋まっております。しかし芝公園にご希望にぴったりのホテルがあります。そのホテルの予約担当に知り合いがいますので、そちらの方からお客様にご連絡をさせていただいてもよろしいでしょうか。お母様にお喜びいただけるお部屋をご用意してくださると思いますよ」

そして、そのお客様がお泊まりになる当日、リッツ・カールトンのグッズと一緒に、次のようなメッセージを添えてお届けしました。

「このホテルのお部屋からは東京タワーだけではなくリッツ・カールトン東京も見えますので、手を振ってくださいね」

その娘さんは、今、リッツ・カールトンに足を運んでくださっています。

●目に見えない信頼を信じる


心からお客様に喜んでもらうとはどういうことか。そのお客様にとって最高の時間を過ごしていただくために自分にできることは何か。心の制約を外して考えれば、お客様の視点に立った提案ができるということです。

今回はリッツ・カールトンをご利用されないという結果になっても、お客様との間には目に見えない信頼が生まれています。それを信じてお客様に尽くすということ。

一見回り道のようですが、それがお客様との絆を築いていく近道でもあるのです。




本書には、感性を高めて相手の望みを引きだし、関係をつくりあげるためのヒントが満載です。ぜひ、お読みください。
 
 

 
リッツ・カールトン 一瞬で心が通う「言葉がけ」の習慣
高野登 四六判/並製 240 ページ
   
978-4-534-04857-8 ¥1,470
  
感動を呼ぶコミュニケーションはたった一言から生まれる!本書は、リッツ・カールトンホテルの「小さくても、感動を創る」ヒントを紹介。お客様の本当の望みを知る方法、職人さんも微笑むほめ方、会話の糸口のつかみ方などプロの技が満載です。

≪章立て≫
1章 仕事のプロとしての「基本」は挨拶から
2章 心の距離を近づける言葉 
3章 喜んでいただく言葉
4章 心を動かす言葉
5章 言いづらい言葉をかけるとき
6章 信頼を築くための言葉 
7章 仕事を楽しむための言葉 

  
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