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わが国における発電量は、半分以上が火力発電によるものですが、昨今の環境意識の高まりにより、二酸化炭素やNOx、SOxなどの大気汚染物質を排出しない発電方法が期待されています。一方で、大気汚染物質を排出しない原子力発電は放射性廃棄物が問題に、風力発電は発電量の不安定さがネックとして挙げられます。
また、電力を大量に消費する大都市部では用地の確保が難しいため、地方に発電所を建設し、そこから送電線を用いて大都市部に電力を供給していますが、その際に「送電ロス(送電損失)」とよばれる電力損失が生じます。そのため、その場で発電しその場で使う、いわば「電気の地産地消」の実現に向けた試みが始まっています。
そこで今注目されているのが、車両の走行や音、あるいは歩行によって発生する振動をエネルギー源とする「振動力発電」です。このたび発刊した 『振動力発電のすべて』 の著者・速水浩平氏は、次のように語っています。

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首都高速道路(株)の試算では、首都高速の道路にくまなく振子型振動力発電機を設置すると、火力発電所2-3基分の発電能力が期待できるそうです。また、振動力発電機の一種である「発電床」を敷き詰めた場合は、東京23区の一般家庭用の電気の40-50%をまかなえる電力です。さらに発電効率を上げれば、原子力発電所1基分の大規模発電も可能になってきます。
(中略)
振動力発電は、いくら発電してもそのこと自体から二酸化炭素や窒素酸化物を出すことはありません。これまで公害を撒き散らす一方だった道路・車が、発電することによって環境対策につながる、そんな大規模発電が期待できます。
(1章−7「TOKYOが「発電都市」になる!」より)
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これらの欠点を解消しうる新しい発電方法として、注目を浴びている振動力発電とはどのようなものなのか。現在は実証実験の段階でも、実用となった場合にはどのような展望が開けるのか。
今月の特集は、振動力発電の原理やその将来性について解説します。
ぜひお読みください。
●原理はスピーカーの逆
スピーカーは、電気信号を振動板と呼ばれる膜面を通じて物理振動に変換し、可聴音として発するのが基本原理ですが、仕組みを逆にすれば、振動を電気信号に変換することができます。小中学校レベルの理科実験として、下図のような装置を作ったことがある方もいるかもしれませんね。

しかし、音が持つ振動エネルギーは一般に小さく、この図のようにせいぜいLEDランプ1個点灯するのが関の山です。速水氏も、大学時代に「音を使った発電(=音力発電)」を研究テーマにすることを発表したとき、同席していた人たちに「実用にはならないからやめたほうがいい」と勧められました。
そこで著者である速水氏は、「音の正体は空気中を伝わる振動なので、振動でさえあれば音でなくても発電はできるのでは?」と思い至りました。
スピーカーにもいくつか種類がありますが、その中に「圧電素子」というものを使うタイプがあり、下図のような原理により、振動から電気を取り出すことができます。

電力とは一般に
電力(P)=電流(I)×電圧(E)
という式で表すことができますが、圧電素子は「高い電圧を得られるけど、電流は少ない」という特徴があります。
そこで振動そのものを増幅させ、取り出せる電流を増やすために装置を改良することで、大きな電力を生み出せるようになりました。
また、振動力発電は何かを燃焼させるわけではありませんので、火力発電のような大気汚染物質や、原子力発電のような放射性廃棄物を出さないことからも、エコな発電方法として期待できます。
●JR東京駅での実験
その後も圧電素子を用いた発電装置に改良を重ね、歩行の振動により発電できる「発電床」のプロトタイプ作成にまでこぎつけました。その「発電床」を用いたJR東日本と慶応大学との産学協同プロジェクトとして、駅構内での移動による振動力発電の実証実験も過去2回行なわれています。

2回目の実験時にはピーク時に766[kW・s]の発電量を記録。これは自動改札ゲートの開閉などの駆動電力を除いた、Suicaのオペレーションシステムの消費電力をまかなえるだけの発電量です。
●日経新聞、「トレンドたまご」への出演
速水氏は最初に「音を使った発電(=音力発電)」を研究テーマにすると発表したとき、同席していた人たちから「やめたほうがいい」と勧められましたが、研究室の先生だけが「やってみなさい。うまくいったら日経新聞の記者を紹介しよう」とアドバイスしてくれたそうです。
速水氏も半分は冗談だろうと思っていたそうですが、12月の最終発表後、実際に日経新聞の記者を紹介してもらい、取材を受けることになりました。

また、東京駅で行なわれた発電床実験をきっかけとしてTV東京系で放映されている「WBS(ワールドビジネスサテライト)」の「トレンドたまご」への出演オファーもきたそうです。
●将来の展望
振動力発電はまだ実験段階のため、今すぐ産業に応用できるわけではありませんが、「振動→電気」にエネルギーを変換する効率をあげることができれば、次のような用途が考えられると、速水氏は述べています。
・非常時の誘導灯の電源として
「発電床」は基本的に「その場で発電、その場で消費」という地産地消型の発電形態になります。災害時には停電となり、建造物内の照明がつかないことも十分に考えられますが、発電床と消費電力の少ない有機EL照明やLEDランプと組み合わせることで、人が歩くのにあわせた誘導灯の点灯が可能になると考えられます。また、その他の機器のバックアップ電源などとしても使えるようになるでしょう。
・防犯用照明として
窓ガラスの割れ感知用につけるセンサーは、コンセントなどから電源を引いていることが多いですが、プロの泥棒は最初にブレーカーを遮断して、機器を動かなくさせてから侵入するそうです。しかし、床が発電床になっていれば、その上を歩くたびに発電されますので、そこからセキュリティ会社へ通報する機器に電力供給ができると考えられます。
・大規模発電の補助として
首都高など、大きな幹線道路は何台もの車が高速で走り抜けていくので、ものすごい振動が発生します。そのため、道路のアスファルトに振動力発電装置を埋め込むことで、火力や原子力による大規模発電を補うことができると考えられています。
首都高速道路(株)の試算によると、首都高にまんべんなく振動力発電装置を設置することで、理論上は東京23区の一般家庭用電気の40-50%を補えるそうです。東京・荒川にかかる五色桜大橋では、その実証実験として振動力発電装置を橋に設置し、ライトアップに必要な電力の一部を補う実験が行なわれています。
いかがでしたでしょうか。
速水氏は小学生のとき、「モーターと発電機の仕組みは逆です」と教わったことからアイデアを温めつづけ、学生時の研究で実践。そして学生ベンチャーとして振動力発電を事業内容とする会社を立ち上げました。もしこの発電が実用レベルで可能となった場合、現在のエネルギー供給を取り巻く勢力図が変わる可能性もあります。
本書では、振動力発電についてさらに詳しく解説しているほか、「日本で学生がベンチャー企業を立ち上げる際の注意点」についても触れています。理工書として、また起業プロセスの実例としても読める1冊となっています。ぜひ、お読みください。
また、以下のブログで本書の書評が紹介されています。
あわせてご覧ください。
⇒404 Blog Not Found (管理人:小飼弾様)
【もくじ】
第1章 驚異のエコ・エネルギー「振動力発電」に成功!
第2章 「騒音」や「振動」を電力に! 日本発のエネルギー革命
第3章 はじめからうまくいく研究などなかった
第4章 研究開発からビジネスへ、いざ挑戦!
第5章 「音力発電」「振動力発電」で脱石油が実現する
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速水浩平
はやみず・こうへい
1981年、栃木県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策メディア研究科在籍。2006年に(株)音力発電を設立し、代表取締役を務める。 SFCAWARD(2005・2006)、第4回かながわ新エネルギー賞、慶應義塾大学塾長賞(2007)など、数多くの受賞歴がある。 |  | | |  |  |  |
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