人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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ジーコという名前

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2006/05/29 10:24

 27日、W杯メンバーがドイツのボンで本格的に始動しはじめた。そこで、今回はW杯第二弾としてジーコ監督について。
 サッカーファンには常識かもしれないが、一般の人に「ジーコは名前か名字か」と聞くと、多くの人は首を傾げるに違いない。実は「ジーコ」は愛称で、名字でも名前でもないのだ。
 ジーコの本名は、Arthur Antunes Coimbra(アルトゥール・アントゥネス・コインブラ)という。「アルトゥール」が名前で、名字は「コインブラ」だ。
 私はポルトガル語は全くわからないが、「ジーコ」というのは子ども時代からの愛称で、「〜ちゃん」の「ちゃん」にあたるような語感の言葉らしい。また、「Zico」は「ジーコ」とは発音せず、「ズィッコ」が正しいという。世界的なスーパースター「Zico」を「ジーコ」と呼ぶのは日本だけらしいのだ。
 ファーストネームの「アルトゥール」は英語圏の「アーサー」。古代イングランドの伝説の王「アーサー王」と同じ綴りである。では名字の「コインブラ」はなにに由来するのだろうか。世界地理に詳しい人なら、ポルトガルの地名だということに気がつくだろう。
 スペイン語が主流の南米の中で、唯一ブラジルがポルトガル語を公用語としているのは、同国がかつてポルトガルの植民地だったから。そのポルトガル北部にある歴史都市がコインブラである。コインブラは12〜13世紀にかけてブルゴーニュ王朝ポルトガル王国の首都で、1290年に創設されたコインブラ大学はヨーロッパでも最古級の大学として知られている。日本でいえば、京都や鎌倉のような都市にあたる。
 日本に限らず、欧米でも名字のルーツは地名や職業に由来するものが多い。ジーコのルーツはこの古い町にありそうだ。

 7月末から、名古屋の栄中日文化センターにて、「名字と日本人」と題した講座を開講することになりました。毎月1回第四土曜日で6回の予定です。6月1日より募集開始となりますので、興味のある方は同センターまでお問い合わせください。
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