人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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太東のこと

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2006/03/13 10:07

 先日、千葉県の東浪見海岸に多数のイルカが打ち上げられたというニュースがあった。大多数は死んだが、何頭かは助けられて近くの太東漁港に離された、ということだ。しかし、イルカがなかなか漁港から出て行かないため、ダイバー達が沖へ誘導したようだが、2頭だけは漁港にとどまっているという。
 このニュースはテレビで現地中継され、ワイドショーなどでも話題になっていたが、舞台となっている東浪見(とらみ)も太東(たいとう)も難読地名である。太東には何度かいったことがあるが、事前に聞いていた「たいとう」という響きと、「太東」という漢字は結びつかず、別の場所かと思っていた。
 そこで、地名の由来を調べてみたが、どうもわからない。太東漁港の名前は近くの太東埼に由来するというのだが、肝腎の太東埼の由来がわからないのだ。吉田東伍博士の名著「大日本地名辞書」には「大東埼/だいとうざき」として収録されている。このあたりは急な断崖が太平洋に沈むところで、海流が複雑だった。今はサーフィンのポイントとして有名だが、江戸時代には「太東の旦那」よばれる怪魚が住んでいるとして、船乗り達に恐れられていたようだ。
 さて、太東埼といえば、九十九里浜の始まるところとして知られている。ここから銚子の方角にむかって、弓形の浜が続き、その長さから九十九里浜という名前がついた。
 ところで、一里といえば約4km。九十九里だと約400kmにも及び、「九十九」は単に「長い」ということの形容詞だと思っていた。しかし、かつて一里が650mだった時代があるという。そうるすと、九十九里は65km弱。太東埼から、九十九里北端の飯岡町までの距離は約60kmで、ほぼ一致するのだ。地名は意外とあなどれない。
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