人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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「周藤」と「周東」

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2017/02/06 10:01

群馬県の名所の一つ・草津温泉の湯畑(photo by takada hiroto/fotolia)

今、群馬県の名字について調べている。群馬県独特の名字にはいろいろあるが、「周藤」もその1つだ。この名字は群馬県と島根県の2か所に多いが、読み方が違う。

島根県の「周藤」は「すとう」と読み、「周防の藤原氏」という意味か、もしくは備後の山内首藤(すどう)氏から漢字が変わったもののどちらかだろう。

一方、群馬県の「周藤」は「しゅうとう」である。北関東では「周」のつく地名はなく、もとは別の漢字だったと考えられる。北関東には「那須の藤原氏」という意味の「須藤(すどう)」が多く、この一族が「周藤」と漢字を変え、やがて「周=しゅう」と読み方のために、「しゅうとう」になったとするとわかりやすい。

さらに「周東」という名字もある。こちらは中国地方には少なく、群馬県と千葉県の内房地区に集中している。内房地区にはかつて上総国周淮(すえ)郡という地名があり、この東部は周東(すとう)郡とも呼ばれている。内房の「周東」は「すとう」なので、この地名がルーツだろう。

しかし、群馬県の「周東」は「しゅうとう」のため、「周藤」からさらに漢字が変化したと思われる。名字のルーツは文献だけを頼っても解決しないことが多い。

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