デリバティブのプロが教える 金融基礎力養成講座
発売日 | 2009.04.28 |
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著者 | 田渕直也 |
判型 | A5判/並製 |
ページ数 | 288 |
ISBN | 978-4-534-04539-3 |
価格 | ¥1,980(税込) |
「金融」を形成するのは、実体経済、金融市場、リスク管理、新金融技術という4つのファクターとその関係性である。デリバティブの設計・運用という金融の最前線で20年以上の経験をもつ著者が、今後、金融がどのように変化しても対応できる知識を伝える。
≪章立て≫
第1章 金融を読み解くために必要なもの
第2章 金融市場の基本
第3章 実体経済と金融市場
第4章 デリバティブとその他の金融商品
第5章 リスク管理とポートフォリオ管理
第6章 相場変動のダイナミズム
第7章 バブルの発生とその崩壊
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詳細
ガイダンス 001
●本書のコンセプト
●本書の構成
●新しい金融パラダイムの幕開け
第1章 金融を読み解くために必要なもの 015
市場のダイナミズム 017
●不確実性の霧 → 絶対的な真理があると信じることはとても危険
●市場は複雑系 → 相互作用メカニズムが市場のダイナミズムを生む
市場の機能 022
●神の見えざる手 → 市場は非常に優れた価格形成システム
●市場の失敗と政府の失敗 → 政府が市場に代わることはできない
●効率的な市場の条件 → インフラの整備と、多数の投資家の参加が必要
金融にアプローチする方法 027
●数的な感性を身につける → 数字の意味をざっくりと把握することが重要
●好奇心を養う → 疑問を放置しない姿勢が必須となる
●仮説検証型アプローチを身につける
→ 論理的思考 + 確率論的思考 + 必要に応じた修正
●歴史に学ぶ → 「過去との比較」と「歴史のフィルター」
Column グリーンスパン神話の失墜 034
第2章 金融市場の基本 037
金利の基本 039
●金利の重要性 → わずかな金利の変動が経済に大きな影響を与える
●さまざまな金利と指標金利
→ 重要なのは「無担保コールレート」と「新発10年国債利回り」
●金利はどのようにして決まるのか
→ 金利は市場による成長率の予想値である
●インフレ率と実質成長率 → 金利の要因はこの2つに分解できる
●金利が経済に与える影響 → 景気に直結する金利は中央銀行が監視する
●政策金利の決まり方 → 中央銀行の3つの選択肢
●中央銀行の課題の変 → インフレとの戦いからデフレとの戦いへ
●長期金利 → 潜在的なインフレ率や成長率を反映する
●信用力と金利の関係
→ 社債金利は、市場がデフォルトの確率を探る中で決まっていく
●信用格付と金利 → 格付けと利回りは比例関係をもつ
●債券価格と金利 → 債券価格と金利は逆の動きをする
●単利と複利 → 長期になるほど複利が有利
株式の基本 059
●金融における株式の意味 → 株式は景気の鏡
●利益と株価(PER) → 株価は企業の生み出す利益によって決まる
●純資産価値と株価(PBR) → 株価は企業の純資産にも左右される
●株価指数とは → 日経225とTOPIXが有名
●株価と金利の関係 → 景気を通じて相互に影響を与えあう
●株価と信用力の関係 → 株価の動きから企業の倒産確率も計算できる
為替の基本 070
●為替とは → 異なる通貨の交換取引
●購買力平価が長期的な基準となる
→ マクドナルドのセット価格を比較すると……
●資本取引の影響
→ 金利の高い国の通貨は積極的に買われ、価格が上昇していく
需給と流動性、ボラティリティー 074
●金融市場における需給の影響 → 需給要因で金利が跳ね上がることもある
●流動性とボラティリティー
→ 売却のしやすさと価格の変動性も価格を左右する
グローバルな市場の連動性 079
●小さく、一体化した世界 → 米国と連動する日本と欧州の金融市場
市場は信認によって成り立つ 083
●市場にとって最も大切なものとは → どんな理屈も「信認」があってこそ
●暴落の正体 → 信認が崩れ去るとき
Column ルービノミクス 086
第3章 実体経済と金融市場 089
経済の仕組み 091
●GDPの比較 → 米国の大きさ、中国の存在感に着目する
●GDPの構成要素 → 民間消費や投資、政府支出に分解できる
経済の見方 096
●日本の経済指標 → 「景気動向指数」と「日銀短観」に注目する
●米国の経済指標 → 雇用統計が最重要
●中国の経済指標 → 経済統計が整備されていない厄介な大国
金融市場は実体経済の動向をどのように反映するか 102
●株価が経済指標の悪化を予言する? → 市場は将来予測の場
●予測の自己実現 → 市場が会社を潰すこともある
●バブルと大暴落 → 株価の変動そのものが景気に影響を与える
●結局、金融市場と実体経済の関係は?
→ 市場は実体経済の鏡であり、実体経済の一部でもある
経済の長期的な動向を左右するもの 111
●経済の長期的な成長を決める要因とは?
→ 「労働人口の増加」と「生産性の向上」
●生産性とは何か → 技術革新と経営管理の向上が生産性を上げる
●生産性と株価 → 株式市場は生産性の向上も反映して上昇する
●インフレと長期金利 → 望ましいインフレ率は1~2%程度
●グローバル化とインフレ → 供給力はインフレ率を大きく左右する
●市場が織り込むインフレ率 → 現在の市場はデフレを想定している!?
●株はインフレに強いのか? → 日米のデータで検証すると……
Column ヘッジファンドの帝王 122
第4章 デリバティブとその他の金融商品 125
デリバティブの種類と特徴 127
●デリバティブとは → 効率的なリスクヘッジを可能にする道具
●先物 → 先の日付で取引するため、少額の証拠金だけで売買できる
●スワップ → 7京円の市場規模をもつ、キャッシュフローを交換する取引
●オプション → 利益だけを得て損失は回避できる取引
●クレジット・デリバティブ → 企業の信用(倒産リスク)を売買する
●CDSが企業倒産の影響を拡大させた → AIGが救済されたワケ
●仕組債 → デリバティブならではのリスクが内包されている
●デリバティブの特徴 → 限度を超えない限りは利点となるが……
ファンドと投資信託 153
●投資信託とは → 一般投資家に向けた代表的なファンド
●その他のファンド → さまざまな投資対象、運用手法をもつファンドがある
●ファンドが破綻するとどうなるか → 巨大ヘッジファンド・LTCMのケース
証券化商品 164
●証券化とは → 一定の担保資産から複数の証券を生み出す金融技術
●証券化のメリット
→ 柔軟な投資を可能にし、多くのプレーヤーに利益をもたらした
●証券化の特徴 → サブプライムローン問題が起きたワケ
●デリバティブの証券化
→ 金融技術革新の象徴が、新しい金融危機を生み出した
Column シンセティックCDO 175
第5章 リスク管理とポートフォリオ管理 179
リスク管理とは何か 181
●リスクの概念 → 不確実性そのものを意味する
●リスク管理の基本的な考え方 → 数値化し、取れるリスクを明らかにする
●BIS規制とは何か → 銀行の自己資本・リスク管理に関する国際基準
●BISによる自己資本比率規制
→ 国際的な業務を営む銀行なら8%以上の自己資本が必要
●自己資本比率規制と信用収縮のメカニズム
→ 貸し渋り・貸し剥がしが起きるワケ
市場リスク管理 191
●VaRとは → 予想される最大の損失額
●VaRの限界と課題 → 実際の相場は正規分布とわずかに異なる
●ファットテール → 投資家心理が生み出す“太い尾”
●リスク管理が引き起こす市場の下落
→ VaR引き下げのための“売り”が原因
ポートフォリオ管理 201
●分散効果 → 分散させたほうが、安全で見返りも大きくなる
●分散効果とヘッジファンド
→ ヘッジファンドはその特異性から分散投資の対象となった
●相関リスク → 金融危機では相関が高くなり、分散効果が消滅した
●すべてのリスクは織り込めない → リスク管理に完璧はない
Column プロスペクト理論とロスカット・ルール 208
第6章 相場変動のダイナミズム 211
相場の変動はなぜ生まれるのか 213
●実体経済の変動 → 在庫変動が景気の波を生み出すロジック
●在庫循環の消滅? → SCMが在庫を限りなく圧縮した
●設備投資サイクル
→ 長期にわたる多額の投資が、景気に大きな影響を与える
●長期の景気変動 → 建設投資と技術的イノベーションの影響力は……
相場変動の自己増幅作用 223
●心理的要因による相場押し上げメカニズム
→ 行動ファイナンスが解き明かす“人間心理の偏り”
●相場上昇の波及 → 「株が上がるから株が上がる」状態に
●なぜ、バブルであることがわからないのか? → 自己正当化作用が強く働く
●相場下落のメカニズム → 「恐怖」が一斉の売りを生じさせる
●暴落の過程 → 小さな上昇をはさみつつ下落する
金融サイクルによる景気変動 233
●ミンスキー・サイクル → レバレッジの変遷による景気変動サイクル
●高レバレッジ経済への移行と逆回転 → バブルを生み、破裂させるもの
Column 大統領先物市場 237
第7章 バブルの発生とその崩壊 239
世界恐慌 241
●“永遠の繁栄”とバブルの発生 → 市場の予測機能はどのように失われたか
●株価暴落と恐慌の到来 → 米国から欧州へ波及したプロセス
●ニュー・ディール政策と経済復興 → 本格的な回復はできなかった
日本のバブル崩壊 248
●“ジャパン・アズ・ナンバー・ワン”とバブルの発生
→ 日本を覆った自己正当化の心理
●土地神話 → 銀行が後押しした不動産価格の高騰
●バブルの崩壊と不良債権処理 → デフレと10年以上の停滞へ
サブプライムローンによる金融危機 254
●金融危機の背景 → 市場への過信が広がっていった
●サブプライムローンの急拡大 → 証券化とデリバティブが駆使された
●米国不動産市況に支えられた世界経済
→ 住宅の値上がりがキャッシュを生んだ
●サブプライムローン問題の発生 → 過小評価された初期の兆候
●パリバショック → 問題の深刻さが明らかになり、一気に信用が収縮した
●回避できなかった危機 → 資金の供給が止まり、負の循環が始まった
●続く金融市場の混乱 → 売り一辺倒になり、市場は機能を失った
●ベアスターンズ危機 → FRBの支援で救済合併へ
●予想を超えて急速に拡大する危機 → 損失額は260兆円にまで膨らんだ
●リーマンショック → 投資銀行の消滅へ
●一転して救済されたAIG → 混乱を象徴するダブルスタンダード
●信認の崩壊と市場のクラッシュ → 決め手となった金融安定化法案の否決
●未曾有の金融危機への対応 → 歴史の教訓を踏まえた金融サミット
エピローグに代えて 283
Column 南海バブル事件とニュートン 285
著者プロフィール
田渕直也
たぶち・なおや
1963年生まれ。1985年一橋大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行に入行。海外証券子会社であるLTCB International Ltdを経て、金融市場営業部および金融開発部次長。2000年にUFJパートナーズ投信(現・三菱UFJ投信)に移籍した後、不動産ファンド運用会社社長、生命保険会社執行役員を歴任。現在はミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役。シグマインベストメントスクール学長。『ランダムウォークを超えて勝つための株式投資の思考法と戦略』『この1冊ですべてわかる 新版 金融の基本』『図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて』(日本実業出版社)、『ファイナンス理論全史』(ダイヤモンド社)など著書多数。