販売員の「あるある言葉」を使わない

―やはり売上トップクラスの人が使っている特別な言葉があるのですか?

前提として、接客の技術などは、人によるところが大きいんですね。いわゆる「キャラ」ですね。例えば、先輩が言うとお買い上げにつながる言葉を、私がそのまま言ってもうまくいかないということも少なくありません。「その人のキャラだから許される」こともあるんですね。

ですから「売上を上げられる人は、みんなこんな言葉を使っている」という黄金フレーズのようなものは、実はあるようであんまりないと私は感じています。キャラの違う人を真似してみても、うまくいかないこともよくありました。

私が研修などでオススメしているのは、「販売員の“あるある言葉”は避ける」ということです。つまり、「ふつうの人がよく言いがちで、売れる販売員がほとんど言わない言葉を避ける」という方法です。まずはこれを意識するだけで、うまく接客できるようになります。

―おもしろいですね。“あるある言葉”は例えばどういうものですか?

最近、売り場でよく耳にする言葉が「私も持っています」という言葉です。これは売れる販売員はほぼ言わない言葉ですね。

と言いつつ私も、「私も持っています」と以前はよく言っていました。それは、「自分も持っている」と伝えれば、親近感を持ってもらって、お買い上げいただけると思っていたからです。実際には、「私も持っています」と言うと、お客様は大抵興味を持たないですね。結局、お買い上げに結びつくことはほとんどありませんでした。

私が超有名モデルであれば話は違うかもしれませんが、お客様から見れば一人の店員です。「その人が持っているなら私が買おう」という決め手にはなかなかなりにくいですよね。

―では売れる販売員の人はどう言うのでしょうか?

売れる販売員であれば「私も持っています」と伝えたとしても、それだけで終わらせることはまずありません。持っている人だから話せること、つまり「自分が使ってみた感想」を伝えるんですよね。

例えば、「私もブルーライトメガネを持っています。パソコンの画面を見るときにも目が疲れることがなくなりました」「私も、この炊飯器を使っていますが、お米の甘みを以前よりも感じられるようになりました」などと伝えると、もう少しこの人の話を聞いてみようかと思ってもらえます。

こうして自分の経験をもとに使用した感想を伝えると、お客様の反応が変わることが多いですね。

─「売れています」という言葉もよくないというのはどういうことですか?

「売れています」という言葉は、お客様によって受け入れ方が大きく違います。そのため、使い過ぎには気をつけたほうがいいでしょう。私の経験上、「売れています」とお客様に言うと、「あらそう」と言ったあとで「やっぱりやめとくわ」という返事があることが多いですね。

その理由は様々ですが、「かぶりたくないから」というものが多いようです。売れているということは、多くの人が持っているということでもあります。同じ服を着ている人や、同じモノを持っている人と鉢合わせて、気まずい思いをして以来、人気商品を避けているというお客様もいました。ほかにも、人とは少し違うものをもっていたいというお客様も少なくありません。

こうしたお客様の気持ちを考えることなく、「売れています」という言葉で一押ししようとするのは、あまりおすすめできません。

ただしこれも、売れている理由や、他のお客様が購入の決め手となったことを、ひと言を加えるとより具体的になります。「このランニングシューズは、初心者の方によくご購入いただいています」「お客様と同じようにパソコンをバッグに入れたい方に人気があります。バッグそのものが軽いのが決め手のようですよ」など話すと反応が変わってきます。

次のページ┃接客慣れしてきたら気をつけたいこと